京都府と京都市は13日、お盆の伝統行事「五山送り火」で、遊覧ヘリの飛行自粛を求める文書を全国34の航空運送事業者に送ったことを明らかにした。昨夏、ヘリの騒音が伝統行事にふさわしくない、といった苦情が市に寄せられたという。
五山送り火は、お盆に迎えた先祖の霊を送る宗教行事で、8月16日にある。午後8時に「大」の字に点火した後、「妙法」「船形」「左大文字」「鳥居形」の順に火がともる。地域住民にとっては観光行事ではなく、市は毎年、行事が始まる10分前から約1時間、家の電気や広告灯などを消すよう呼びかけている。
ヘリの騒音に苦情
市によると、近年、観光客らを乗せて上空から送り火を見る遊覧ヘリが目立った。各送り火の保存会でつくる京都五山送り火連合会は昨年7月、市内のヘリポート運営事業者に文書を送り、遊覧飛行を目的にヘリポートで離着陸しないように求めた。
ただ、当日は警察や消防、報道機関ではないヘリが5機ほど飛んでいるのを市が確認した。市民からは「ヘリの音や光がうるさい」「お盆の最後にご先祖を送る伝統行事としてどうなのか」といった声が市に寄せられたという。
送り火は静謐な気持ちで
府と市は今年2月28日付で、国土交通省の航空局からヘリの運航許可を得ている34の航空運送事業者に文書を送った。文書は西脇隆俊知事と松井孝治市長の連名で、山科区と伏見区をのぞく市内で8月16日午後7時50分から1時間、遊覧を目的とした飛行の自粛を求めた。法的なものではなく、協力をお願いする形という。
松井市長は「送り火は、山を見上げて静謐(せいひつ)な気持ちでご先祖を見送る伝統行事。上から轟音(ごうおん)を立てながら見下ろすという発想自体が違うのではないか。丁寧に説明して、事業者にご理解いただきたい」と話した。